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【呪術廻戦】あなたに殺された私は呪術師として生まれ変わる

第14章 あなたと新たな夜明けを(上の続き)








服を着込んで上着を羽織ってから、まだ薄暗い夜明け前の凍てつくように寒い外へと出た。

「あそこまで無下限で行くから、僕に掴まって。」

高専内に数多く建ち並ぶ寺社仏閣の中でも眺めがよさそうなところに目星をつけて、悟くんは私を抱きかかえるとゆっくりと宙に浮いて上昇しながら屋根上へと移動する。
呪力で脚力を強化して高くまで跳び上がることはあっても、こんな風に空中を優雅にゆっくりと移動することはできない。
やっぱり悟くんはすごいな…と、ただ悟くんの首に腕を回して掴まって身を任せているだけの私は感心するばかりだった。

「はい、とうちゃーく。」

屋根上に着地した悟くんは私を降ろさずに座り込んだため、私は横抱きに抱えられたままだ。

「は僕の膝の上ね。」

子供のように屈託なく笑う悟くんにその大きな体でぎゅーっと抱きしめられて、お互い着ている分厚い上着に阻まれて体温は感じられないけれど、真綿で包み込まれるように温かい気持ちになった。


東の空がだいぶ白んできた。
「もうすぐ日昇りそうだね」と悟くんに声を掛けたけれど、悟くんは珍しく上の空で浮かない顔をしているように見えた。

「どうしたの?」

「ごめん、ちょっと思い出したことがあって…言うつもりはなかったんだけどさ。」

悟くんは言い淀んでいるけれど、本当は言ってしまいたいのだろうと感じたので口を出さずに待つ。

「…が寝てた時、寝言で傑を呼んでたよ。」

ばつが悪そうに悟くんが言ったそのことに私は身に覚えがあった。
消え去ってしまいそうな傑を引き止めようとした、今朝のあの夢だ。

「傑が夢に出てくるくらい、が寂しい思いをしてしまってるのかと思うと…の大事な弟を奪ったのは僕だから、やるせなくてね。」

確かに、寂しくないと言えば嘘になる。
これまでの十年間は傑にいつかまた会えるかもしれないとほんの僅かな希望も捨てられずに、どこかで生きている傑を思い続けてきたけれど。
傑はもう二度と会えない場所へ行ってしまった。
でも、それは傑の親友である悟くんも同じではないだろうか。
だからこそ私の気持ちも分かってしまって、こうして気にかけてくれているのだ。





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