第1章 海賊狩りのゾロ
「ぷへェっ!?
まずうっ!く…くそ甘ェ!!砂糖が入ってんぞ、こりゃ。塩だろうが!ふつうおにぎりには、塩!!」
「だ…だって、甘い方が美味しいと思って…!!」
「こんなもの食えるかボケ!!」
「ああっ!!やめてよ!やめて!!
食べられなくなっちゃう!!」
ヘルメッポはリカのおにぎりを地面に叩きつけ、それを踏み荒らす。
ぐりぐり、と擦りつけるように。
泥だらけになって食べられる状態じゃなくなってしまう。
ララは唇を噛み締めてその光景を見守る。
ここが海軍基地でなければすぐにでも救いの手を差し伸べていたところだが、ここで騒ぎを起こすのは色々とまずい。
耐えるしかない。
「ひ…ひどい。あの子がせっかく作ったのに…!」
「大丈夫!!アリならなんとか食ってくれるさ。
ひぇっひぇっひぇっ」
「ああ…!!……!!
………ひどいよ!わたし…一生懸命作ったのに……!!」
ボロボロボロ、とリカは瞳に溜めた涙がこぼれ落ちた。
悔しそうに表情を歪める。
「あ〜〜あ〜〜泣くな、泣くな!!だからガキは嫌いだぜ。
悪いのはお前なんだぞ?ここになんて書いてあるか、読めねェのか」
「………!!」
「〝罪人に肩を入れし者、同罪とみなす 海軍大佐 モーガン〟」
ヘルメッポの指差すその先には看板が立ててあった。
リカは地べたに座りこみ、溢れ出す涙を拭う。
自分の作ったおにぎりの無残な姿に涙が止まらないのだろう。
「俺の親父の怖さを知ってるよな。てめェが大人なら死刑ってとこだ!!
……おい、このガキ投げ捨てろ!!」
「……は?」
「塀の外へ投げ飛ばせっつったんだよ!!俺の命令がきけねェのか!!
親父に言うぞ!!」
「は…はい。只今!!
ヘルメッポは海兵の胸ぐらを掴んで凄んだ。
よほどモーガン大佐が怖いのだろう。
彼の脅しのようなその言葉に従わざるおえない。
海兵はリカの元へ歩み寄り、傷つかないよう優しく抱き上げてから小さなその身体を塀の外へ投げた。
ルフィ達の方へ。
抱き止めてくれると信じて。
「いやぁああ!!」
ララは咄嗟にリカを助けようとしたが、ルフィの方が早かった。
ゴムのように腕を伸ばし、小さなその身体を受け止める。
海兵の願いは通じたようだ。