第2章 航海士ナミ
「よくやったよ、お前は!よく戦った。
まあ、見ちゃいねェけどな!大体わかる」
「………」
シュシュは何も言わなかった。
ただルフィが持ってきたドックフードの箱を咥えて、何処かへ去っていく。
「ワン!」
「おう!!お前も頑張れよ!」
「ワン!ワン!!」
「はは…」
去り際、シュシュはルフィに向かって言葉を発するように吠えた。
彼は犬の言葉を理解しているわけではない。
ただなんとなくで勝手に解釈しているだけだろう。
「ルフィ」
「ん?」
「帽子」
「ああ、サンキュ」
「大事な帽子なんでしょ?」
「ああ。俺の宝物だ」
ララはルフィに被された麦わら帽子を彼の頭に被せて返した。
いつも大事そうにしているその帽子。
なにか思い入れのあるものだろうとララは思っていた。
そんな大事な帽子を彼女に託したのは信頼の証だろう。
ララから受け取った帽子を嬉しそうにルフィは被り直す。
「さっきはごめん!どなって」
「ん?
いいさ。お前は大切な人を海賊に殺されたんだ。
なんか色々あったんだろ?別に聞きたくねェけどな」
「………」
ナミは過去に家族を海賊に殺されていた。
彼女が海賊を酷く、恨むわけはそれだった。
だが、ルフィとララはそれ以上ナミの過去を聞くことはない。
それが彼女には有り難かった。
誰にでも触れられたくない過去はある。
それを根掘り葉掘りほじくり返す趣味は二人にはなかった。
ルフィに関しては興味もなさそう。
「………ぬぐぐぐ…!!
わしはもう我慢できーん!!」
「え?」
「町長さん?」
今まで静かだったブードルが突然、唸りだした。
ララとナミがそちらに視線を向ける。
「酷さながらじゃ!!さながら酷じゃ!!シュシュや小童がここまで戦っておるというのに!!
町長のわしがなぜ、指を咥えて我が町を潰されるのを見ておらねばならんのじゃ!!」
「………」
「ちょ、ちょっと…町長さん!落ち着いて」
「男には!!退いてはならぬ戦いがある!!
違うか!!小童!!」
「そうだ!おっさん!!」
ルフィやシュシュに感化されたブードルはこのままいけば、バギーに単身で乗り込むだろう。
冷静な判断が出来ていない。
非常に危険な状態だ。
ほっとけば殺される道しかないだろう。