第2章 航海士ナミ
「あ…ルフィ。おかえり。
早かったね。大丈夫だった?」
「ああ。ぶっ飛ばしてきた」
「あら、海賊。生きてたの…!てっきりライオンに食べられちゃったのかと思ったわ」
「おい…何言い出すんじゃ」
「あんたが海賊の仲間集めて町を襲いだす前にここで殺してやろうか!!」
「おい、やめんか!娘!!」
ナミは戻ってきたルフィに野次を飛ばした。
海賊というだけで彼に悪印象を彼女は抱いている。
殴りかかりそうな勢いで。
ブードルがナミを止めていなければ本当に殴りかかっていただろう。
「………。
お前なんかに俺がやられるか」
「何っ!?
よーし、やったろうじゃないの!!」
「やめろっちゅーんじゃ!何なんじゃ、お前らは!!」
ルフィはべー、と舌を出してナミを相手にしなかった。
スタスタ、と怒る彼女を無視してシュシュの元へ歩いていく。
手に戦利品を握りしめて。
亡き主人の形見の残骸を見つめる傷だらけのシュシュの目の前にルフィは手に握ったそれをそっと置いた。
少し箱が潰れているが、ドックフードだ。
おそらく、店に置いていたものだろう。
「あっ……」
「これしか取り返せなかった!
あと全部食っちまいやがってよ!!」
「………」
(あいつ…あのライオンと戦ってきたんだ。あの犬の為に……!)
ルフィに対するナミの誤解は少しは解けたようだ。
海賊の皆んなが皆んな極悪非道ではない。
彼のように無駄な争いを好まない海賊だっている。
それを少しでも理解してくれたらいいのだが。
「海賊ってね…」
「え……?」
「確かに町を襲ったりする奴等も多いけど…皆んなが皆んな、そうじゃないんだよ?
ルフィみたいに純粋にただ航海を楽しむ奴等だっている」
「………」
「それだけは知ってて欲しいな」
ララはナミを無理に説得するようなことはしなかった。
海賊への偏見を。
彼女にも事情があるのだと察していたから。
ただ知識として知って欲しい、と彼女に告げただけだった。