第2章 航海士ナミ
「あ…」
ルフィが檻の隙間から手を伸ばして、鍵を取ろうとしたその時。
犬が鍵を咥え、エサと勘違いしたのだろうか。
あろうことか、咥えたそれをゴクリと飲み込んでしまった。
皆、目を見開いて静まり返る。
あまりの衝撃に言葉が出てこない。
「終わったな…」
「……だね」
「このいぬゥ!!!
吐け!!今飲んだのエサじゃねェぞ!!」
ルフィは犬の首をしめ、必死に訴えた。
しかしもう遅い。
鍵は腹の中だ。
次に出るのは、排便の時。
犬の腹を掻っ切るか、排便を待つしか道は残されていない。
どちらも最悪な道だが。
「くらっ!!童ども!!
シュシュをいじめるんじゃねェ!!」
そこへ革の鎧を着て、眼鏡をかけている老人が四人の前に現れた。
背中に槍を担いでいる。
ルフィと喧嘩中の白い犬の飼い主だろうか。
「シュシュ?」
「誰だおっさん」
「わしか。わしはこの町の長。
さながらの町長じゃ!!」
「…… ねえ、町長さん。この町に医療用具ない?
治療したいんだけど…」
ララはゾロに目配せしてこの町の町長、ブードルに訴えた。
彼女は医療物資を持ち歩いていなかった。
戦闘員でもあるが、船医でもあるマルコの補佐をしていたララは簡単な応急処置程度なら対処できる。
道具さえあれば。
この町の町長ならば、適切な場所に案内してくれるだろう。
「なら、ワシの家に来るといい。案内しよう」
「ありがとう、町長さん。
ゾロ、行くよ」
「…ぁ…ああ…」
ブードルの家はペットフードショップのすぐ隣りだった。
ララはゾロを無理矢理引き連れて、家へと招かれる。
ナミとルフィをその場に残したまま。
****
内装は必要最低限のものしかない、簡素なものだった。
ララはゾロを寝室のベッドに寝かせて、ブードルから救急箱を借りる。
消毒液、包帯、ハサミなど一般的な医療用具が詰められていた。
「さあ、ゾロ。
脱いで」
「…は!?
な、何する気だ、てめェ!!」
ララはベッドに横になったゾロの身体の上に馬乗りになる。
彼は顔を赤らめ、身を引く。
側から見れば情事を働く前の男女だ。
ララはただ怪我の手当をしたいだけなのだが。
ゾロは完璧勘違いをしていた。