第2章 航海士ナミ
「なあ、シャル!」
「…なんだ」
「この檻開けてくれー!」
「……無理だ。
俺にそんな力はない」
「くっそー!!」
ルフィはシャルに懇願したが、檻を壊すような力は持ち合わせていなかった。
シャルに出来るのは無限に雷を発生させることができるだけ。
ただそれだけだった。
風神から生まれた神獣であり、雷を操る雷獣。
それがシャルの正体。
「落ち着くまではここにいよ。
今降りても捕まるだけだし」
「…だな」
ララ達の真下の町の通路にはバギー海賊団の手下達が数名。
未だ町は騒がしい。
彼等を一掃することは出来なくはないが、ララ一人では数が多すぎる。
まずはルフィの檻をなんとかしなくては。
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「もうだいぶ酒場から離れた。
とりあえず、すぐには追っちゃこねェだろう」
バギー海賊団の追っ手が少し落ち着いて、屋根の上から町へ飛び降りた三人。
ゾロはルフィの入った檻をズズズズ、と引きずりながら出来るだけ酒場から遠ざかっていく。
ララもその後に続く。
「とりあえずは退いたみたいだね…」
「しかし、厄介だな。この檻は…!!」
「そうなんだ。これが開かねえとあいつが来ても何もできねェよ!」
「困ったね…」
「もうダメだ。血が足りねェ…。
これ以上歩けん…!!」
ドサリ、とゾロはペットフードショップの前で倒れた。
限界が来たようだ。
無理もない。
ずっと血が止まらず、垂れ流し状態だ。
人間、血を流したまま長時間歩けるわけない。
ララは心配そうにゾロに駆け寄る。
「うおっ!
……なんだこの犬は……!」
うつ伏せに倒れて視線を横にズラすゾロ。
すると一匹の白い犬が視界に入った。
驚いてゾロは飛びのく。
「犬?あ、犬だ」
「かわいい!」
ララはぱあぁ、と表情が華やぐ。
少女のような愛らしい笑顔で。
コロコロと表情が変わる子だ。
ルフィの前に鎮座し、微動だにしないその犬はまるで番犬のようにペットショップの前から動かない。