第2章 航海士ナミ
「おい、ゾロいいよ!!腹わた飛び出るぞ」
「飛び出したらしまえばい!!」
「なんでそこまで……!!」
「うるせェ。俺は俺のやりてェようにやる!!
口出しすんじゃねェ!!」
もう誰にもゾロを止められる者はいない。
バギーに斬られた箇所から血が噴き出そうとも、その動きが止まることはなかった。
渾身の力を振り絞ってゾロは檻を肩に担いだ。
本来、一人で運べるような代物ではない。
火事場の馬鹿力というやつだろうか。
この強情さ。
ララのよく知る彼に少し似ていた。
白ひげ海賊団一番隊隊長、マルコに。
「ゾロ、ちょっと待って」
「あァ?なんだよ?」
「大丈夫、止めたりしないから。
——エアー」
ララは指をパチン、と鳴らして唱えた。
その途端、ゾロの担いでいた檻がふわっと軽くなる。
ステリア族の風の力を使って体感の檻の重量を減らしたようだ。
決して檻が軽くなったわけではない。
風で檻を浮かせているようなイメージだ。
これで傷の負担は減るだろう。
「…お?なんだ?」
「少しは軽くなったでしょ?」
「あ、ああ…サンキュ」
「?
何したんだ?ララ」
「風の力でちょっとだけ軽くしたの」
「ふーん…便利だなァ」
ルフィはララの能力に感心していた。
ナミが驚いて目を見開いているのにも気づかずに。
こいつ等は一体何者なのだ、と。
四人はバギー達が煙に巻かれ、自分達を見失っているうちにその場を後にする。
体制を整えるために。
まずはルフィを檻から出さなくては何も始まらない。
「くそっ!あいつら、どこだ!!」
「いません!!船長っ!!
ナミも!!ゾロも!!女も!檻まで!!」
「馬鹿な!!あれは五人がかりでやっと運べる鉄の檻!!」
ようやく火薬の煙から抜け出した時にはすでに遅し。
バギー海賊団の目の前には自分達に向けられた砲台があるだけ。
他はなにもない。
檻もゾロやララもどこにもいない。
逃げた後だった。