第2章 航海士ナミ
「ぎいやーーーっ!!
大砲がこっち向いたァーー!!」
「ぬあーーっ!!
あれにはまだ〝特製バギー玉〟が入ったままだぞ!!」
(…バギー玉?)
「おお!!」
「おい、点火!!」
「え…
は…はいっ!!」
「急げ!!」
バギー玉。
それは小さな町ならば吹き飛ばせてしまう程の威力のある砲弾だった。
ゾロとララがここへ来る道中、住宅街の一棟が吹き飛んだそれはバギー玉によるもの。
威力は証明されている。
ララとバギーは一旦、戦いを中断した。
今はそれどころではない。
彼等はその威力を知っているからこそ、震えあがった。
ゾロがナミに点火するように急かしている間にララは安全な場所に避難する。
概ね、計算通りにことが進んだようだ。
「よ、よせ!!
ふせろォー!!」
「ぎぃやあああああ」
砲弾に火が点火された。
その瞬間。
ドゥウン、とバギー達に向かって砲弾は放たれた。
酒場屋上は一部、崩壊されてしまう。
砲弾の火薬の煙で周囲は何も見えなくなってしまった。
逃げるなら今しかない。
「ゾロ!」
「…ララ」
「ナイス!」
「フッ……」
砲弾の射程圏外へと避難していたララがルフィ達の元へ戻ってきた。
彼女はゾロに声をかけ、笑顔で親指を突き立てる。
付き合いは短いが中々いいコンビのようだ。
彼も笑みを零す。
「今のうちに逃げるぞ。
ところでお前誰だ?」
「そいつはうちの航海士だ」
「バッカじゃないの、まだ言ってんの!?
そんな事言う暇あったら、自分がその檻から出る方法でも考えたら!?」
「あー、そりゃそうだ。そうする」
「……」
どうやらルフィはナミを自分の海賊団に引き込もうとしているらしい。
毎度のごとく、一筋縄ではいかないようだが。
どうやら彼女は海賊が嫌いのよう。
「いや、問題ない。
てめェは檻の中にいろ!!」
「ちょ…ちょっと…
馬鹿なことする気じゃないよね?」
「さあね。
オオ…!!」
ゾロは笑っていた。
ルフィに檻の中にいろ、と。
ララはその先がなんとなく予測出来た。
だから馬鹿なことするなと忠告するも、その言葉は受け入れられることはなかった。
ララの予測通りゾロはあろうことか、檻をそのまま担ごうとしている。
止めたところでやめる気はないだろう。