第2章 航海士ナミ
(……俺がここにいても足手纏いになるだけだ。こいつに任せるか…。
女に助けられるなんてなさけねェ!完璧、油断した!!あの船長が何かの実の能力ってのはわかっていたはずだってのに!!)
(まずい!形成が逆転した!!このままぼんやりしていたら、あの三人も私も四人共命はないわ!)
「………。
後ろから刺すなんて卑怯だぞ!!
デカッ鼻ァ!!」
「!!」
「バカっ!!それだけは言っちゃ……」
ゾロとララがタイミングを見計らってバギーから逃れようとしたその時。
ルフィが言ってはならない一言をバギーに向かって叫んだ。
デカッ鼻、赤っ鼻。
その言葉は最も言ってはいけない言葉だった。
彼のコンプレックスなのだろう。
その言葉を放った者はバギーの逆鱗に触れ、その先は死が待つのみ。
彼の手下達はルフィの放ったその言葉に恐怖で怯えていた。
「誰がデカッ鼻だァああ!!」
「ルフィ!」
「!」
当然、バギーはルフィに殺意を剥き出しにした。
そして短剣を持った手だけが彼の元へ飛んでくる。
能力を使って、ルフィを短剣で突き刺そうとしていた。
檻の隙間を縫って彼にドスっと突き刺さったように見える。
しかし……。
「お前は必ずぶっ飛ばすからな!!」
「ほほーう、ぶっ飛ばす?」
ルフィは短剣を歯で噛み割っていた。
それはもう使いものにならないだろう。
ララはほっと胸を撫で下ろす。
エースの弟に死なれては彼に顔向けが出来ない。
「ぶあーっはっはっはっはっはっ!!ぶっ飛ばすだァ!?
終いにゃ、笑うぞ!!てめら四人、この場で死ぬんだ!!
ぶあっはっはっはっ!!」
「ダメだ…終わった…!!」
「はっはっはっはっ!!
死んでたまるか!!」
「この状況でどうぶっ飛べばいいんだ、俺は!?
野朗ども!!笑っておしまい!!」
縄で身体を縛りつけられ、檻に閉じ込められた状態でルフィはバギーをぶっ飛ばす、という。
勝ち目などない。
なのに何故だか、ララにはその言葉が信じられた。
バギーや手下達が大笑いするなか、彼女には笑みがこぼれている。