第2章 航海士ナミ
「うわっ!よえーな、あいつっ!」
「……うそ…」
「…へへ……」
「?」
「……なんて手ごたえのねェやつだ…」
「へっへっへっ…」
「?」
ドサリ、とバギーは倒れる。
血も流れずに。
手下達は自分の船の船長が斬られたというのに焦りもせず、ニヤニヤ不気味な笑みを浮かべていた。
ゾロもララも疑問符を浮かべる。
「おい、ゾロ!早くこっから出してくれ」
「!
ああ」
(…どうなってんの、この一味!?船長が殺されたのに笑ってるなんて…!)
「こりゃ、鍵がねぇと開かねェぞ。
この鉄格子は斬れねェな」
「私の力でも無理だね、これは」
「そうか。困ったなァ…」
ルフィが入ってる小さな檻は頑丈だった。
刀では斬れそうもない。
ララの力でも無理だ。
ゾロとララは檻に近づいて、肩をすくめる。
「へっへっへっへっ!!」
「あーっはっはっはっはっ!!」
「何がそんなおかしい!おとなしくこの檻の鍵を渡せ!!俺はお前らと戦う気はない!!」
「……
(……なんかおかしい)」
「………?おっかしな奴らだなァ…」
「!
ゾロ!!」
「!!」
何故か大笑いをしだした手下達。
ゾロもララも鈍いルフィでさえも、違和感を感じていた。
真意を理解していない。
気づくのが遅かった。
死んだはずのバギーの手がうようよ、と動いて背後から短剣でゾロの腹を突き刺さした。
直前でララが異変気づくも、反応しきれない。
ガクン、とゾロは膝をつく。
「!?…ゾロっ!?」
「!?………なに、あの手!?」
(…油断したっ……!)
「ぎゃっはっはっはっ!!」
手下達の高笑いのわけがようやくわかった。
バギーの戦いはいつもこうなのだろう。
何故手だけが動かせるのかはわからないが、倒したと思わせておいて相手の隙をつく。
それがバギーの戦い方。
卑怯な戦法だ。
だが、彼等は海賊。
文句は言えない。
「くそっ!!なんだこりゃ、一体…!!
手が……浮いてやがる…!!」
ゾロは短剣を握ったその手をなんとか腹から引き剥がす。
ドクドク、と脇腹から血が溢れ出た。
目の前には宙に浮いた短剣を握る手。
おそらく、悪魔の実の能力だろう。