第2章 航海士ナミ
「あー…だめだ…。
腹へった…」
「俺も…限界だ…」
「……しょうがない…」
(この近くに島、あったけ…?)
ルフィとゾロは小舟に身体を倒し、天を仰ぐ。
このままでは共倒れの道しかない。
ため息混じりにララは当たりの海を見渡し、島がないか確認した。
シャルの背に乗って食料の調達でもしようか、と思案しているのだろう。
「お、鳥だ」
「でけェな、わりと…」
晴天の空に一羽の鳥が二人の男の目の前を飛んでいる。
中々の大きさだ。
三人で食べるには十分だろう。
「よし、食おう!あの鳥!」
「?
どうやって…」
ガバッとルフィは起き上がった。
さっきまで食料に飢えて元気がなかった男とは思えない。
頭上の空に飛ぶ鳥をどうやって捕まえる気なのだろうか。
ゾロとララは首を傾げた。
「俺が捕まえてくる!!まかせろ!!
ゴムゴムの…
ロケット!!」
と、ルフィは小舟の帆を伸びた腕で掴み、そのまま手を離して鳥のいる方角へと飛んでいった。
ゴムゴムの実を食べている彼だからこそ、なせる技だ。
「なるほどねー…」
「便利ー」
「はっ!」
「あ…」
「は!?」
ルフィの行末を空を見上げて見守るゾロとララ。
鳥に届いたは届いたのだが、食料にするつもりが食料にされそうになっている。
頭を大きなくちばしで咥えられて。
少し考えれば想像出来たはずなのだが。
彼は考えるより先に行動にうつすタイプのよう。
「ぎゃー!!助けてー!!」
「あほー!!」
「あっはっはっ!!」
「一体何やってんだ!!てめェは!!」
頭上を見上げると、鳥に咥えられたルフィは連れ去られていく。
ゾロはオールを漕いでその後を追いかける。
ララはただその様子にただ笑い転げるだけ。
彼女がこんな風に声を大にして笑うのはいつぶりだろうか。
シャルと共にずいぶん長いこと旅をしてきたが、こんな笑顔は白ひげの船にいる時以来だ。
「おーい、止まってくれェ!!
そこの船止まれェ!!」
「あ…ゾロ、あれ…」
「あ?」
ララの視線の先には数人の男が、海で溺れている。
付近に船はない。
遭難者だろうか。