第1章 海賊狩りのゾロ
「面倒ごとに首突っ込むでないぞ?」
「わかってるってば。マルコみたいなこと言わないでよ」
「そう言っていつも巻き込まれてるだろうが」
「むっ…」
シャルのその言葉にララは不貞腐れたように、表情を歪めた。
二十歳はとうに過ぎているというのに、幼い少女のよう。
「マルコ……元気かな…?」
「心配ない。あいつは強い」
「……うん。そうだね」
「会いたいか…?」
「会いたい。会いたいけど……いいの」
「そうか…」
「うん」
マルコというのは、今最も海賊王に近いと言われる男エドワード・ニューゲート、白ひげ海賊団の一番隊隊長の名だった。
数年前までララもその船に乗っていた。
一番隊副隊長として。
彼の恋人として側にいた。
だが彼女は誰にも告げずに船を出た。
恋人であるララにさえ告げずに。
ララが旅立ったわけを知る者は本人以外誰もいない。
白ひげを除いては。
「——さて、お腹もいっぱいになったし、行こっか!」
「ああ」
いつの間にか綺麗に平らげられた真っ白な皿。
ララは席を立ち、シャルはまたフードの中に身を隠す。
店主に金を払い、店を出る。
この町に立ち寄ったのは空腹を満たす為と物資の調達、それだけだ。
もう用はない。
しかし彼女の視線の先には海軍基地。
ララの足は港ではなく、そちら側に向かおうとしている。
あの麦わら帽子の少年が気になるのかもしれない。
「どこへ行く気だ」
「ちょっと…」
海軍基地の方角へ足を踏み出そうとしたその時。
ドンッ。
とララの足元に何かがぶつかった。
視線を下に向けるとそこには、五歳くらいの女の子が尻餅をついている。
状況から察するにララにぶつかってしまったのだろう。