第1章 海賊狩りのゾロ
「!!」
「…?」
「ここではゾロの名は禁句のようですね…」
「ふーん…」
眼鏡をかけた桃色の髪をした少年、コビーはルフィにコソコソっと耳打ちした。
彼等と席が近いララにはしっかりと聞こえていたが。
「さっき貼り紙を見たんですけど、この基地にはモーガン大佐という人がいて…」
コビーのその言葉にガタガタン、とまた大きな音を立てて島民が飛び退く。
まるでコントのように大袈裟に。
海賊狩りに怯えるのはまだ理解できるが、正義の味方である筈の海軍大佐に怯えるのはどういうことなのだろうか?
ララは島民の様子に首を傾げた。
「えぇ!?」
「おお!!」
(…変な町)
まさかモーガン大佐にまで反応するとは思っていなかったのだろう。
コビーは驚き、少し不安そうな表情をみせる。
対するルフィは面白そうに笑みを浮かべるのだが。
この町は何かある。
それが何かはわからないがそれは断言できた。
しかしララはその何かに自ら首を突っ込むことはしたくなかった。
海軍基地のある町で面倒ごとを起こしたくないのだろう。
その後、ルフィとコビーが店を出て行ったのはララの注文した料理が手元に届いた頃だった。
ようやく彼女の空腹が満たされる。
黄金に輝くオムライスを口元に運んだ。
「わかっているとは思うが…」
「ん?」
ふと、ララのフードの中から声が聞こえた。
彼女は驚いた様子もなく、食事を続ける。
フードの中からちらり、と顔を覗かせる小さな黒い生き物。
ララと同様、エメラルドグリーンの瞳をした子猫だった。
一見すると普通の猫だが、人間と会話が出来るようだ。
名をシャルという。