第1章 海賊狩りのゾロ
「!
やめたまえ!!これ以上この町で騒動を起こす事は許さんぞ!!」
「おいおい、やめとけ。
そのへんにしとけよ」
止めたのはゾロだった。
ルフィの服を掴み、動きを止める。
床に落ちた麦わら帽子をララは手に取り、彼の頭に被せてやった。
「君らが仲間じゃない事はよくわかった!!今すぐこの町を立ち去りなさい!!」
ルフィ、ゾロ、ララの三人は素直にリカの家から出ていく。
コビーは床に倒れたまま、天井を見上げた。
そしてルフィが自分を殴ったわけがようやく理解できたようだ。
「……!!」
(わざとか…!僕のために!!
わざと僕にけしかけて…!!殴らせて!
また…!僕は最後の最後まであの人に頼ってしまった!!何も変わってないじゃないか!!
僕はバカか…!!?
ここから這い上がれなきゃ、本当にバカだ!)
コビーは決意した表情で立ち上がった。
もうそこにルフィ達はいない。
彼一人だけだ。
「僕を海軍に入れてください!!雑用だってなんだって喜んでやります!!海兵になるためなら!!」
(よしやるぞ!!僕はやる!!)
コビーは目の前の海兵に頭を下げた。
変に言い訳するよりは潔い。
「中佐、私は反対ですよ!!
わるいがね、私はまだ君を信用しきれない。海賊が海軍のスパイになるという例もある。まずは君の素性を調べて…」
「………。
ぼくは!!
海軍将校になる男です!!」
そこへ一人の海兵が家に入ってきた。
コビーの目の前に立つ海兵は中佐だったようだ。
彼の言い分は最もだ。
素性を調べてから入隊を許可するのが筋というものだろう。
コビーは一瞬不安そうな表情を浮かべるが、めげなかった。
海兵の言葉を遮って宣言する。
力強い眼差しで。
「………。
海賊にやられた同士は数知れない。海軍を甘くみるな。入隊を許可する」
「……!
はいっ!!ありがとうございます!!」
この日、コビーは海軍に入隊した。
中佐の独断で。
恐らく彼は気づいているのだろう。
コビーが海賊の船に乗っていた過去があることに。
それでも許可した。
彼の強い意志を感じて。
いい上官だ。