第1章 海賊狩りのゾロ
「じゃ、行くか。おばちゃん、ごちそうさま」
「………」
「リカちゃん、元気でね」
「もう行っちゃうの…?」
「ごめんね…?」
「ルフィさん…」
名残り惜しげにララを呼び止めるリカだが、ララは困ったような笑顔を浮かべるだけだった。
ルフィ、ゾロ、ララの三人はコビーの横を無言で通りすぎる。
少しわざとらしすぎるほどに。
傷ついた表情を一瞬、コビーは浮かべた。
「君も仲間じゃないのか?」
「え…!ぼく……!ぼくは……
僕は彼等の…仲間じゃありません!!」
コビーは歯を食いしばって断言した。
あれだけ一緒にいたのだ。
仲間と思われるのは当然だ。
「………!
待ちたまえ、君達!!
本当かね?」
「………。
俺、こいつが今まで何やってたか知ってるよ」
「!
ルフィさん…!?」
「どの辺の島だかわかんねェけど、こーんな太った女の海賊がいてさァ、アルビダつったかな…」
「ちょっ…
やめて下さいよ…」
ルフィは身振り手振りして、海兵にコビーの素性を話そうとした。
それをコビーはおろおろとした怯えた様子で止めようとする。
彼自身が悪事を働いたわけではないが、二年間海賊船に乗っていたということが問題だ。
コビーはその素性をバラすわけにはいかなかった。
「………」
「何だかイカついおばさんなんだけど、二年間もこいつそこで…」
(やめて下さいよ!!やめて下さいよ……!!)
「やめて下さいよ!!」
ルフィの口は止まらない。
コビーはその口を止める為に彼の顔面を拳で思いっきり殴った。
殴られた反動で麦わら帽子がはらり、と床に落ちる。
「……!」
「………」
「………」
「……?」
殴られたルフィは口元が笑っていた。
ゾロも笑みを零す。
ただララだけはその殴られた意味を理解してないよう。
「やったな、このヤロォ!!」
「!!」
やられたままで終わる男ではない。
ルフィは殴られた報復にコビーを拳で殴った。
彼の鼻から血が流れる。
それでもルフィの拳は止まらない。
何発も何発も拳でコビーを殴る。
彼は殴り返すこともできずに、ただされるがままだった。