第1章 海賊狩りのゾロ
「雑用でもアルビダの海賊船に二年いたのは本当なんだろ。
海軍の情報力をみくびるな。その素性が知れたら入隊なんてできねェぜ」
ゾロとララは食事中にルフィからコビーとの出会いの話を聞いていた。
コビーはたまたま釣をしようとした船がアルビダ海賊団の船で二年間そこで雑用をさせられていた、と。
ルフィは大渦に巻き込まれて、アルビダの拠点の島へ漂流してしまった。
悪魔の実のせいでカナヅチなので樽の中に身を潜めて。
そこをコビーが助けたという二人は刺激的な出会いを交わしたらしい。
ルフィがアルビダを倒し、二人は共にこの町へやって来たというわけだ。
彼がルフィに強い恩を感じているわけがララとゾロはようやくわかった気がした。
「失礼!!
君達が海賊というのは本当かね…」
楽しく食後の団らんをしていたその時。
一人の海兵がノックもせずにリカの家に入ってきた。
大勢の海兵たちを家の外で待たせたまま。
町の住民たちがその様子を窓の外から心配そうに窺っている。
まるで檻の中の猿のようだ。
「そうだね。仲間も二人出来たことだし、今から海賊ってことにしよう」
「………」
「反逆者としてだが、我々の基地とこの町を実質救ってもらったことには一同感謝している。
しかし君らが海賊だとわかった以上、海軍の名において黙っているわけにはいかない。
即刻、この町を立ち去ってもらおう。せめてもの義理を通し、本部への連絡は避ける」
(…よかった……)
ララは本部への連絡は避けるという言葉に心底安心していた。
海軍なんか怖くない、とは言ったものの素性がバレるのは彼女にとって都合が悪い。
ララは一人、胸を撫で下ろしていた。
「おい、海軍っ!!何だその言い草は!!」
「てめェらだってモーガンにゃ、押さえつけられてビクビクしてたじゃねェか!!」
「我々の恩人だぞ!!」
意義をとなえたのは町の住民だった。
彼にとってはルフィ達が海賊だろうが、恩人には変わりない。
助けてもらっておいて、海軍の発言は恩を仇で返すような行為だった。
本人たちは特に気にした様子はないが。