第1章 海賊狩りのゾロ
「ぁ……あ…ありがとう…ございます。ララさん」
「怪我ない?」
「は…はい…」
「おい、何をした」
「ん?…弾を斬っただけ」
足元に転がる銃弾は真っ二つに割れていた。
剣で斬られたような、綺麗な断面がゾロの瞳に映る。
「武器は?」
「……これだよ。
——風剣」
そう言うと、ララの手元には半透明の剣が握られていた。
実体はない。
風の力を凝固させた剣だった。
操れるのは世界でも彼女一人。
悪魔の実ではなく、ララは生まれつき風の力を自在に操れた。
ステリア族。
全滅した幻の一族の唯一の生き残りだった。
「何者なんだ…お前は」
「その答えは後で。今は早く縄を解かないと…
海軍が来る前に」
「はっ…!そうでした…!」
「んなのいいから逃げろ。俺は一カ月耐えれば助かるんだから…」
「助かりませんよ!!あなたは三日後に処刑されるんです!!」
コビーの張り上げた声がその場に響いた。
ゾロの目が大きく見開かれる。
「なに言ってやがる…!俺はここで一カ月生き延びれば助けてやるてあのバカ息子が…」
「そんな約束、初めから守る気なんてなかったんです!!
だからルフィさんとララさんはあなたにかわってあいつを殴ったんだ…!!真剣に生き抜こうとしていたあなたを踏みにじったから!!」
「……!!
な…何だと…!?」
「私はあいつがムカついたから殴っただけだよ。海軍嫌いなの」
コビーの話す真実にゾロは驚きを隠せない様子だった。
知り合ったばかりの赤の他人に何故そこまでするのか、と。
ゾロは理解に苦しむ。
「もう海軍は敵にまわってるんです!!
……お二人にお願いがあります」
「?
コビー…?」
「ゾロさんの縄を解いたらルフィさんを助けてあげて下さい!!
彼は僕の命の恩人なんです!海賊になれとはいいませんが、ルフィさんが強いというのは本当です!!あなた達二人が手を組めば、きっとこの町からだって逃げ出すことが出来ることでしょう!!逃げてください!!」
「コビー…」
「……」
コビーはララとゾロに懇願した。
瞳に涙をうるませながら。
余程、ルフィに恩を感じているのだろう。