第1章 海賊狩りのゾロ
「な…な…殴りやがったな!!この俺を殴りやがったな!!親父にだって一度も殴られたことねェのに…!!
俺は海軍大佐モーガンの御曹司だぞ!!親父に言いつけてやる!!」
ヘルメッポのその言葉に住民達は怯えた。
まるで小さな子供が負け惜しみに言うようなそのセリフ。
ララは呆れずにはいられない。
大人になりきれてない子供のようだ。
「お前がかかってこいよ」
「ルフィさん、やめてください!」
コビーは必死でルフィを押さえる。
手を離してしまえば、今にも噛みつきそうだ。
「俺を殴ったことを後悔しながら死んでいけ。
お前は死刑だ!親父に殺されちまえ!」
海兵二人に肩を担がれながらヘルメッポは捨て台詞を吐いて基地へと戻っていく。
ララはその背中を見えなくなるまで睨みつけた。
彼女は海軍が嫌いだった。
正義のマントを肩に背負いながら平気で嘘をつく。
自分達の面子がなにより大事な組織。
ララはそれを知っていた。
「行っちゃった…」
「あんな奴、これ以上殴る価値もねェ」
「凄いのね。お兄ちゃんとお姉ちゃん!私、胸がすっとしちゃった!」
「そうか?じゃあ、もって殴っときゃよかったな!」
「リ…リカ!!こっちへきなさい!!」
ルフィとリカが話をしていると、彼女の母親らしき女性が慌てた様子で声をかけた。
当然だろう。
ルフィ達の仲間と思われれば、何を言われるかわかったもんじゃない。
最悪死刑と言い渡される可能性だってある。
それを母親は恐れてるのだろう。
「あの人達と口を聞いちゃダメ!仲間だと思われたらリカも殺されちゃうのよ!」
「だってママ、あの人はいい人よ!ゾロって人だって…」
「バカな事言わないの!!まさか磔場へは言ってないでしょうね!?」
「う…うん。行ってないよ…!」
「さ、早く家へ入って!」
母親の凄い剣幕にリカは思わず、磔場へは行っていないと嘘をついた。
正直に話してしまえばさらに、叱責されることだろう。
リカは半端強引に自宅へ連れ戻される。
名残惜しげにルフィとララに視線を送って。
二人はそれを笑顔で見送った。