第1章 海賊狩りのゾロ
「ねぇ、君。名前なんだっけ…?」
「あ…コビーです」
「コビーね。この子町に連れてってくれない?
私も後で行くから」
「は…はい…!」
コビーはララの言いつけ通り、リカを連れて一足先に町へ戻っていく。
ルフィと二人で話をしたいのだろう。
あまり白ひげの話を人前で彼女はしたくなかった。
騒がれると面倒なことになる。
それを避けたかったのだろう。
ララはルフィの元へは行かず、塀の外で彼の帰りを待った。
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「あれ、お前まだいたのか」
「君とちょっと話したくてね」
「話?」
ルフィが基地の中から戻ってきたのはその数分後だった。
軽々と塀から飛び降りる。
ララが自分を待っているとは思ってもみなかったのだろう。
少し驚いているようにも見える。
「君、エースの弟でしょ?」
「エース!?
お前、エースの知り合いなのか!?」
「昔、一緒に航海してたよ。よく君の話してた。
手のかかる弟がいるって」
「そうか!エース元気か?」
「多分ね。今は会ってないからわからないけど」
「ふーん、まぁ元気ならいいや!」
ルフィはニカッと白い歯を見せて笑った。
エースの太陽のような笑顔と面影が重なる。
一瞬ララは目を見開くが、すぐ懐かしむように目を細めた。
エースと彼女は年が近いせいもあって、白ひげの船の中でも特に仲が良かった。
だからルフィの話は耳にタコができる程、彼から聞いていた。
いつか会えたらいいな、と思っていた人物がララの目の前にいる。
フードで隠れて表情は見えないが、彼女の口元が弧を描いていた。
「それじゃ、行こっか」
「?
どこにだ?」
「リカちゃんのとこ。コビーも一緒にいるよ」
二人は肩を並べ、リカとコビーの元へ向かった。
道中、エースとの思い出話やロロノア・ゾロが泥だらけになったリカのおにぎりを平らげてくれたことなどルフィは話してくれた。
ララはその話を相槌を打ちながら笑顔で聞く。
二人の仲が縮まった時だった。