第15章 すれ違い
あぁ…とうとう現実が見えてきてしまった。
私はちゃんと好きだったけど、悟さんは違ったのかな?
胸が痛い。
傑「おいっ!悟…」
傑さんが呼び止める前に音を立ててドアが閉まった。
私の泣き声だけが部屋に響いて、誰も言葉が出せずにいる。歌姫さんが
歌「…ちょっと五条と話してくる!」
と言って出て行き、残された私たちは部屋に戻ることになった。
傑さんに抱えられて医務室を出る。
首にしっかりと顔を埋めて、傑さんを感じる。
よかった。傑さんはこうして一緒にいてくれて。でも、こんなに泣いていたらめんどくさいと思うかもしれない。
私を抱いたまま、器用に鍵を開けて部屋に入る傑さん。
ベッドに降ろされて顔を覗き込まれる。
傑「まずはおかえり。大丈夫?そんなに泣いて…可愛い顔が腫れてしまうよ?庵先輩から風海が大変って言われたけど、怪我は無さそうだね?何があったか教えてくれる?」
こんな泣き顔見られたくなかった…
けど、傑さんが帰ってきてくれてよかった。
『今日、東京駅で乗り換えの時に悟さんを見かけて…綺麗な女性と待ち合わせしてたのを見ました。ぐす…合宿で約束していた日にも来れなくなっちゃったみたいですけど、連絡もなくって心配してたのに…うぅ…』
私が泣きながらまとまらない話をしている間も、うん、と相槌を打ちながら聞いてくれる。
『悟さん、もう私のこと嫌いになっちゃったのかなぁ…』
ポツリと呟くと、ふわっと抱きしめてくれて傑さんの匂いに包まれる。
傑「悟の気持ちは聞いてみないとわからないけど、私は側にいるよ?いずれ結婚するのは私たちだ。正直、風海を独り占めするチャンスだと思ってる。だから気持ちを強く持って?存分に私に甘えていいよ?」
優しく背中を叩きながら慰めてくれた。
『傑さん、私はずるいです。悟さんのことで悲しいと思うのに、傑さんに甘えて…いてくれてよかったと思っています…』
傑「それでいいよ。3人でいるって決めたんだから。むしろ風海はもう少しずるくなってもいいんじゃないかな?私たちを振り回すくらいでちょうどいいんだよ?」
と言って笑った。
そんな…振り回すなんて…。
いつのまにか涙が止まって、傑さんの心臓の音に耳を傾ける。
安心する音、落ち着く香り。
私は本当に欲張りだな…