第15章 すれ違い
悟「なんだよ?なんかされた?大体おまえはさぁ、弱いんだから守られてりゃいいんだよ」
それは私が弱いから、悟さんは強いから何をしてもいいってこと?
また溢れ出す涙…
あの女性に優しく触れていたかと思ったら、急に悟さんに触れられるのが嫌になった。
涙を拭おうとした手が私の顔に触れた途端、ぞわぞわとした感覚になり、身体が硬直した。されるがままになっていたが、抱きしめられそうになって、悟さんの匂いとは違う甘い香りに意識を戻される。弱々しくではあるが、手で悟さんの胸を押し返し、嫌だと主張する。
悟「あ?なに?」
怒気を含んだ声にビクッと跳ねる肩。
何も言えず、しばらくの間があった時にガラガラとドアが開き、誰かの息を呑む音が聞こえた。
こんなところ見られたくないんだけど…
歌「おい!クズ!風海に触るな!」
夜「…悟、何してる?また泣き出したじゃないか…」
歌姫さんと夜蛾先生…
先生もきっと、私が悟さんのことで泣いていると勘づいたんだろう。申し訳ない、こんなことで。
歌姫さんが私を抱きしめてくれたところで、ほっとして身体の力が抜けたのを感じた。耳元で“夏油、もうすぐ帰ってくるって”と呟かれて、安心して涙が止まらなくなる。
悟「えっ?なに?俺が悪ぃの?」
必死に涙を堪えようとして俯く。
鼻水を啜る音が医務室に響いた。
「五条悟が特定の女を作ることは無理なんだよ。だから…」
術師の彼が声をかけた時に、また大きな音でドアが開き、
傑「風海!!」
ここのドアは近いうちに壊れると思う。
私を呼ぶ声に振り返り、堪えていたものが溢れ出した。
『ぐすっ…傑さん…ぅう…』
傑「そんなに泣かないで?ほら…」
抱きしめてくれる手は温かくて、縋り付いて泣いてしまった。
しばらくして私が落ち着いたのを見計らって
傑「このままここにいる?部屋に戻る?」
と確認された。
傑さんがいるなら部屋に戻りたい。
だけど、悟さんも一緒だと耐えられない。
迷っていると、ベッド横のパイプ椅子に座ってケータイを触っていた悟さんが急に立ち上がり
悟「散歩してくるわ〜」
と言って出て行ってしまった。