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真珠の涙

第15章 すれ違い



医務室へ行くと、入り口で夜蛾先生が待っていた。

夜「合宿から帰ってきて早々悪いな。…その…なぜすでに泣いてる?」

状況がわからなければそうなるよね。
歌姫さんが付き添ってくれたけど、ここからは仕事だからしっかりしないと。

負傷者に涙を落としていく。
こんな時にも“他の男、治しやがって”とか“目合わせんなよ?”とか言ってくれる悟さんを懐かしく思う。今はもう、そんなこと思わないんだろうな…また涙が溢れた。たくさんの涙をかけると治りは早くなるのか?と夜蛾先生に聞かれたので、1番最後に涙を落とした人にかけ続けると、最初の人よりもなんと治りが早かった。

自分でも怖くなる。

こんな力があるからって身近な人が命を削っていたらどうしよう…きっと過去はそうだったんだろう。

治した術師の方から何度もお礼を言われて、少し私の存在意義を確認することができた。涙は止まったけど、目元は赤く腫れたまま。いかにも泣きましたという顔で廊下を歩くのは恥ずかしかったので、医務室の保冷剤を借りて冷やしてから帰ることにした。

先ほど治した方がわざわざお礼を言いに戻ってきてくれた。

「あの、武神さん。治してくれてありがとう。目大丈夫?」

『全然!きれいに治ってよかったです』

「五条くんと夏油くんのことで泣いてるの?君がよければ今度食事でもどうかな?あの2人は特殊だから、普通のメンタルじゃ付き合っていくのは難しいでしょ?相談乗るよ?」

『え?』

顔を覗き込まれて少し頬が赤くなるのを感じる。
確かに悟さんの行動で泣いてたけど、悪く言われるのは嫌だな。

『いや、あの…』

としどろもどろになっていると、ドアが大きな音を立てて開いた。

悟「風海!おかえり!…で、何してんの?」

明るくおかえりと言えるんだ…後ろめたいことはないの?
術師の方から引き離そうと近づいた時に香る甘い女性ものの香水の匂い。さっき見たのは夢じゃないと実感させられる。

匂いが移るまで一緒にいたんだ…
どこで何してたの?
怖くて聞けないけど。

術師の人はすごく冷静だった。
けれどそんな様子が彼を挑発しているようだった。

「武神さんが治療の前からすごく泣いていたからさ。話を聞こうと思って」

悟「は?」

男性を睨みつけていた悟さんがこちらを見て目が合った。
ビクッと震える肩。
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