第13章 春
少しだけ緊張が逸れて、指先にも血が巡ってきた。
『傑さん、ご両親に理解してもらえてよかったですね!』
傑「割とやりたいようにやらせてもらえる家だったからね」
そんな会話をしながら、傑さんにくっつく。
安心する香り。
緊張したご褒美にさりげなく嗅がせてもらう。
傑「随分と積極的だね?」
含み笑いをしながら腕を背中に回して抱きしめてくれた。
首筋に顔を埋める傑さん。
あ…傑さんもにおい嗅いでる…私、臭くないかな?
傑「あぁ…癒された。」
緊張の糸が解けてつい2人きりだと勘違いしていたけど、補助監督さんが運転してくれていてバックミラー越しに目があった。
ちょっと恥ずかしいけど、これからまた緊張しにいくのだから、少しくらい癒されたい。
手を繋いで気がついた。
バングルをしてくれてることに。もちろん私もしてる。
傑さんからもらったピアスとネックレスもつけて、フル装備だ。これをつけているだけで、傑さんに守られている気分になるから不思議だ。
2人の時間を満喫していると、渋滞もなくあっという間に実家に着いてしまった。
車を降りてインターホンを押す。
すぐにお母さんが出てきてくれた。
母「おかえり!よくきたわね〜夏油くんもありがとうね。さっ中に入って?」
傑「お邪魔します。」
『傑さん、コート預かりますね』
ハンガーにコートを掛け、リビングへ案内する。
こちらでも、リビングで待っているお父さん、キッチンでお茶を用意するお母さん。どこのお家も一緒だなぁ。
父「お帰りなさい。」
『うん、ただいま。お父さん、こちら夏油傑さんです。傑さん、私の父と母です。』
傑「お邪魔します。夏油です。いつも風海さんにはお世話になっています。これ、よろしければどうぞ。」
手土産をお父さんに渡す。
なんか…ドキドキする。
傑さんがお父さんとしゃべっている!!
お父さん、無言で受け取らないで!
何か言うことあるでしょ!?
思わず声を上げようとすると
母「あらぁ♡これ、朝から並ばないと買えないのよ?風海が甘いもの好きだから選んでくれたのね!ありがとう♡
夏油くんは甘いもの好きなの?詳しいのね〜!」
また始まった。お母さんは話し出すと止まらないから、お父さんがいつも聞き役になってくれてるんだ。無言の空間よりはいいけど、いつ本題に入る?