第13章 春
夏油side
緊張して手も冷え切って震えている風海を今すぐ抱きしめてやりたいのを堪えて、リビングへ向かう。
今までの彼女と家で過ごしてたまたま遭遇したこともあったが、自分から紹介したいと言ったのは初めてだったので父も母も歓迎ムードだ。あからさま過ぎて、風海に引かれないか不安だったが、それどころではなさそうだ笑
母はずっとニコニコしているし、父に至っては娘がいないからどう接していいか迷っているようだ。
さっそく本題に入らせてもらう。
傑「今すぐの話ではないけど、いずれそうなるから報告しておこうと思って。結婚できる年齢になったら、風海と結婚したいと思ってる。そして夏油の名ではなく、彼女の武神家に婿にいく。」
さすがに驚くよな。
目を見開き、何か言葉を選んでいるようだ。
傑「彼女の家は代々続く家柄で、呪術師として生きていく上ではそっちの方が都合がいいんだ。」
『家柄なんて…申し遅れました。最近わかったことなんですが、私の家は…』
風海が言いかけたところで遮らせてもらった。自分が言わなければいけない気がした。
傑「彼女の家は人魚の家系なんだ。命を狙われることもあって、俺が守っていきたいと思ってる。…武神家の名は、呪術師なら噂程度に聞いたことのある家系で、実在しないと思われていたけど実在していた。日本にある人魚伝説は彼女の先祖なんだ。ひっそりと生きていたけど、彼女には明るい道を歩いてもらいたい。だから結婚して武神になる。婿にいくことを許してください。』
父親の顔を見てから頭を下げた。隣に座っている風海も私に合わせて下げてくれた。
傑父「…少し驚いたよ。一人息子が婿に行きたいなんて…だけど、自分の生きる道は自分で切り開くべきだと私も思うよ?
傑がそうしたいなら、そうしたらいい。なぁ母さん?」
傑母「そうねぇ…命を狙われるって、大丈夫なの?傑も風海ちゃんも…お婿にいくよりも、そっちが心配よぉ」
尤もだな。もちろん死ぬ気なんてないが。そしてもう一つ大事なことを伝えなければ。もしかしたら、こっちの方が重要かもしれない。