第12章 2月
夏油side
同じ部屋で眠ってさっきまで一緒にいたのに、わざわざ教室に会いに来てくれたことが嬉しかった。
思わず抱きしめて、香りに酔った。そんな時に飲み物を買いに行っていた悟が戻ってきて、嫉妬心を剥き出しにして突っかかってくる。
少しの優越感に浸りながら、授業に遅れると心配する風海を見送ることにした。だが、全然動かない。どうしたのかと声をかけようとすると、小走りで悟へ向かって行った。
機嫌が悪いと背中に書いてある悟の後ろから抱きつき、何か言っている。前屈みになって悟の耳元で囁いている風海。窓の光が差し込んで、とても絵になっている。珍しく悟の耳が赤くなっていて、今度はこちらが嫉妬する番になった。
風海が教室を出てからは、機嫌良くなった悟がいた。
一体何を言われたんだ?気になるが、表に出さないようにした。
嫉妬するのは、自分に自信がないからだ。
相手を信じていないからだ。
私は風海を愛している。
それでいい。
おそらく悟の誕生日同様、一緒に過ごしたいということだろう。健気に待っている風海が可愛くて、その日は悟に譲ったんだ。きっと自分の時も同じようにしてくれると予想して。
午後になって任務の依頼が舞い込んできた。こーゆー日に限って…いつものように特級のどちらかという時にはジャンケンで決める。いつもは嫌がる、というよりめんどくさがる悟が立ち上がり、何も言わずに任務へ行った。どーゆー風の吹き回しだ?
硝子と顔を見合わせる。
硝「なんか賭けでもしてた?にしては機嫌良かったけど」
傑「いや。今日は何も…あっ!」
今朝のやり取りを思い出した。明日の誕生日のため、風海が教室に来たことを。もしかしたら彼女が悟に…
硝子に事情を説明したら
硝「さすがの最強も風海には勝てないんだ?」
と言って笑った。
高校生らしい午後を送り、放課後になった。その後も任務依頼が来ていたが、悟が代わってくれるという。らしくない行動に些か不安になる。後で何か言われるのではないか。
若干の不安を感じながら、風海の部屋へ向かった。