第10章 幸せと不幸
五条side
あぁ゛〜しくった。
風海への思いが強すぎて、周りが見えていなかった。だからあんなに悲しそうにしてたのに、言い出せない状況を作ってしまった。
結果、話を聞けたからよかったものの、今後そうじゃないかもしれない。何やってんだ、俺。
今回ばっかりは、傑との役割分担とか言ってらんねぇだろ。
バツが悪くて医務室を出てきてしまったけど、少なからずショックだった。昨日はあんなに幸せな気持ちだったのに。クズと言われることが多い俺でも、もしかしたら父親になることへの憧れがあったのかもしれない。もしかしたら俺の子かもしれないと思ったら、愛おしさが溢れて、今日の任務も張り切って臨んだんだ。それなのに、風海の傷だらけの姿を見て冷静じゃなかった。
はぁぁ〜…
自販機が並ぶベンチでホットココアを飲みながら項垂れていると、笑い声が聞こえた。
硝「ここにいたのか。一丁前に落ち込んじゃって…風海と夏油は部屋に戻ったけど?五条は戻らなくていいの?」
悟「…俺は今、懺悔の時間なの。そっとしておいてよ。慰めてくれるならココアでいいよ。」
らしくない言葉を吐きながら、遠くを見つめる。
硝「…ほら、ココア。私がおごるのは今日だけだからね?特級術師。」
硝子までがらしくない行動を取っている。何か起きる前触れか?ブラックコーヒーを開けながら硝子が話し始める。
硝「風海のメンタルも心配だったけど、五条が1番きてるな。そんなにパパになりたかった?夏油の子かもしれなかったのに。」
確かに傑の子だったかもしれないし、傑の子として育っていく予定だった。でも風海はどちらかわからないと言った。
それでもアイツらの子なら、俺の子と言っても過言ではないくらい可愛がれる自信があった。昨日の夜、柄にもなく“パパだよ〜”なんて言うほど。
悟「…風海から出てくる子は、誰の子であろうと俺が守るよ。」
硝「お前ら、本当に一途になったよな。クズには変わりないけど。…風海を大切にしろよ?あんなにいい子、今時珍しいよ。擦れてないというか…純粋に私たちを尊敬してくれてる。」