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真珠の涙

第10章 幸せと不幸


五条side

硝「いいから医務室に来て。」

そう電話がきて、機嫌が悪いまま医務室へと向かう。今風海に会ったら、また罵ってしまいそうだ。弱いことを責めたいんじゃない。怪我してほしくない。死んでほしくない。痛々しい姿を見たくない、ただそれだけ。

医務室へ入ると、硝子がベッドを整えていた。まだ学生なのに、ほぼコイツの城だな。反転術式で他人を治療できるなんて、俺には真似できない代物だ。特級2名と反転術式使いのこの代は当たり年と言われてる。それに比較される後輩たちは可哀想だが、話題性だけで言えば風海だって負けていない。狙われることが今後増えるから、傷つかないように監禁しておきたいくらいだ。

アイツの笑顔を見れば機嫌良くなると思う。けど、なんか引っ込みつかない感もあってドカリと椅子に座った。

悟「で、なに?話って?アイツは?傑も帰ってきたんじゃねぇの?」

硝「血だらけだったから、今シャワー浴びてる。夏油も一緒に。」

悟「チッ…んだよ。なら俺がいる意味なくね?」

傑がそばにいてくれて安心した。あんなにボロボロになって、見てられなくて、あんなになるまで戦って…俺が間に合わなかったことに苛立って責めてしまった。俺がそばにいるよりも、傑の方が慰めるのは得意なはずだ。

しばらくすると風海が戻ってきた。傑といる時は、いつも安心した顔をしているのに、今はまだ悲しそうな表情だ。俺が強く当たったからか?

硝「風海はこっちにおいで。横になる?」

首を振って俺の前のベッドに腰掛ける。

悟「…で?なに話って。コイツが弱い話なら知ってんだけど?」

つい強い口調で問いかけてしまった。
大丈夫か?そう言って頭を撫でてやればよかった。
抱きしめて、安心させてやればよかった。
そういえば昨日も体調悪くて、話し合ったばかりだった。体調悪いのにあんなに激しい戦闘になって…え?そういえばお前…

『あの、悟さん。…赤ちゃんが…ダメになっちゃって…ごめんなさい…せっかく楽しみにしててくれたのに、ごめんなさい。私が弱いせいで…』


あぁ…車では七海や灰原がいたから言い出せなかったんだな?俺が責めたから、タイミングも逃した。硝子が近くにいてやれって言っても、医務室を出てしまった。きっと1番近くにいて欲しかっただろうに。



大切な女を泣かせたのは俺だ。
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