第10章 幸せと不幸
2人とも無事でよかった…
『七海くん。悪いんだけど、上脱がせて?で、左腕のシャツの袖切って止血して欲しい』
出血がひどい私の腕を見て、顔を歪める。上着を脱がされ、シャツになる。袖をちぎる時の衝撃にも痛みが走る。さっきまではアドレナリンでてたから動けていたけど、絶対的安心感のある悟さんが来たことで痛みが増してきてる。
悟「お前らもう行け!風海のケガ応急処置…ってなにその格好!?胸のボタン弾けそうなんだけど?!ちゃんと上羽織っておけよ!」
戦ってる最中でも、悟さんは悟さんだ。
「これが特級ね…また会おうぜ、人魚姫」
そう言って窓から飛び降りた呪詛師。ここ4階なのに!?
悟「逃すかよ!?…」
追いかけようとした悟さんだけど、見失ったのか戻ってきた。いや、見失うわけない。眼がいい私たちが残穢を追うことなどわけないけど、おそらく私を優先してくれた。
悟「まずは硝子のとこ行こう。で、何があったのか教えろ」
いつものように横抱きにしてくれて、安心した香りに包まれる。
補助監督さんの車に戻ると、両手両足を縛られて後部座席に倒れていた。あの男の仕業だろう。私たちの動きがよくわかっている。補助監督に連絡がいけば、高専のヘルプが来るから先に動けなくしておいたのか。
補「ありがとうございます。すみませんでした…すぐに高専に戻りましょう。」
車を飛ばして高専に戻る。
車内では悟さんのお説教タイムだった。
悟「お前ら本当弱すぎっ!死にてぇの?」
みんな頑張ったのに、そんな言い方…でも全然太刀打ちできなかったのは本当だし、生きてたのは悟さんのおかげ。でも、でも…
『私たちだって、必死だったんです。七海くんと灰原くん巻き込んじゃって…死ぬほど怖かったのに…』
悟「そんなの言い訳だよな?あんなクズ野郎に手も足も出なかったくせに。」
思わず涙が出てしまった。なんで…そんなに怒られなきゃいけないの?心配かけてしまったのも、私が弱いのも全部私が悪いけど…
悟「はぁぁ…お前、泣けば済むと思ってんの?俺が言いたいのはさぁ…」
言いかけたところで、七海くんが抱きしめてくれた。
七「五条さん、心配だったのはわかります。力不足だったのはこちらです。彼女を責めないでください。」