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真珠の涙

第10章 幸せと不幸



声に強い呪力が乗り、男に向かっていく。声量は大したことないのに、ビルの窓は割れ、建物が揺れる。

男も飛び上がった瞬間だったからか、吹っ飛ばされて壁に打ち付けられた。呪いの歌でもうたえば退けられるんじゃないかな、なんて考えながら七海くんと灰原くんを起こす。
灰原くんは全然起きなくて、七海くんは肩を貸せば歩けたので、とりあえず2人まとまっていてもらう。何か物が飛んできても、灰原くんが無防備ではない状態で。

男が目を覚ます前に逃げるのが得策だけど、意識のない人と自力で歩けない人を連れて逃げ切れる確信がない以上、ここから離れられない。
拘束しようと近づくと、うめき声が聞こえて慌てて離れた。

「…あ゛〜くそっ!脳揺れただろうが!」

もう意識が戻った。私じゃ太刀打ちできない。けど、やるしかない。相手が呪霊じゃないだけで、手が震える。呪霊は気持ち悪いけど、祓う対象だから何とも思わない。けど、今回の相手は人間。手が震える。

「あぁ…可哀想に。震えちゃって…本当に怖いのは、呪霊じゃなくて人間だと教わらなかった?」

相手もナイフのようなものを構える。
長刀で距離を取っていれば安全かもしれないけど、相手の動きがわからない以上、下手に動けない。いつものようにグラウンドではないこともあり、大きく動けないのもハンデになっている。

『七海くん、応援呼べそう?!あと、何かアドバイスない?!』

七「…外の補助監督は電話に出ません。上級生に連絡しました。怒り狂っていたので内容がよくわかりませんでした。
いつものアナタなら、アドバイスはありません。足りないのは自信です。」

七海くん、ツンデレなんだから!!いつも褒めてくれないのに、こんな場面で自信だけだなんて…そして怒り狂っていたのはどっちだろう?急にこの人が可哀想になってきた。

『ありがとう七海くん!』

そう言って男に向かって行く。とりあえず、歩けない2人を守らないと!灰原くんは目立った怪我がないけど、意識が戻らないことが不安。早く治療してあげないと!

キンッ!カチンッ!と刃物のぶつかる音が響く。相手に遊ばれている感もあるが、身体の柔らかさを活かして逃げる。
いつもは生傷の絶えない、悟さんとの訓練を頑張ってよかったと初めて感謝した。
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