第10章 幸せと不幸
あちらからはなかなか仕掛けて来ない。
ならば、こちらから!
動こうとしたところで灰原くんがさっと動いてあっという間に祓ってしまった。さすが準2級術師!
『灰原くんありがとう!七海くんのとこに…』
振り返ると、七海くんが倒れていて呪詛師の人が踏みつけていた。呪霊を祓ったことで本来の場所に戻ってきたようだった。
灰「七海!!」
?「へぇ…コイツ、七海って言うんだ。人魚姫の取り巻きは特級2名で聞いてたけど、お前らみたいな雑魚も護衛なの?」
なんてこと言うの。私のお友だちに!
七海くんを踏みつけにして!!悔しくて涙が出そうだけど、これだと相手の思う壺になってしまう。
呪力を解放して怒りを露わにする。
『私のお友だちです。訂正してください。』
七「風海、ダメだ、逃げてください。灰原…」
この狭い場所で呪具を振り回すのは難しい。突き技だけに絞られる。もしくは体術。でも七海くんが敵わなかった相手に、苦手な体術で対抗できるわけない。けどどうにかしないと!!
?「じゃ、こっちから。ガキ1人連れていくくらいわけねぇな」
連れていく?やっぱり拷問されるのかな?そんなの絶対やだ。倒さないにしても、ここから逃げないと!
近づいてくる男。灰原くんが前に立って守ってくれるが、あっけなく倒される。速くてついていけそうにない。
『灰原くん!!』
上半身を支えて安否確認をする。打ちどころがよくなかったのか、朦朧としている。
わたしのせいで2人が…
?「こんなクズに守られるなんて、人魚姫も大変だな。さっさとこっちにくれば、お友だちを傷つけないで済むんだけど。」
『そんなの絶対にいや。』
?「じゃあ力ずくだ」
そう言いながらも、手加減されている。私が渡り合える相手じゃないことくらいわかってる。だって2人が倒されてるんだから。
遊ばれてる。
そう思うと怒りが込み上げる。
けど冷静にならないと、相手の思う壺。
よく見て分析して。相手のクセを。
男がニヤリと笑って、七海くんの方へ向かっていく。
まずい。
この人、私の嫌がることを良く知ってる。
七海くんに向かって飛び上がった瞬間に大声で叫んだ。
『やめてー!!』