第10章 幸せと不幸
七「余計なことは考えないでください。呪霊は男女でいないと出て来ないんです。灰原と呪霊討伐してください。こちらは私がお相手します。」
そう言って私を後ろに隠してくれた。かっこいいな七海くん。でも、1人で任せるなんて…
灰「気をつけろよ!さっさと倒してこっちに合流するから!」
と私の手を引いて走り出した灰原くん。たしかに七海くんは傑さんと悟さんからしごかれて、かなり強くなったと思う。私が手も足もでないくらいに。
2人で階段を登っていると、何度も4階の表示になる。だけど、さっきの4階ではない。七海くんはいないし、呪霊の気配も強くなった。
『灰原くん、止まって!ずっと上に気配を感じてるのに辿りつかないのって、階段が悪いのかも。さっき私が見た天井のシミはずっとあるの。そこに行って?きっと肝試しに来た人たちも、ずっと続く階段に疲れ果てて休憩したんじゃないかな?』
灰「なるほど!立ち止まったところで襲ってくるのか!」
先程のシミの下まで行き、構えて立ち止まる。
…出て来ない。随分と慎重な呪霊だな…
灰「風海、こっちに来て!男女で来てる人を狙うってことは、それなりの関係だったはず!」
恋人のフリをするってこと?七海くんは私のこと女の子扱いしてくれるけど、灰原くんは今までそーゆー意識したことなかった。
ぐいっと腕を掴まれて抱き寄せられる。腰と背中に手を添えられ、逃げられない。
『ちょっ…近いよ…』
灰「夏油さんに知られたら怒られるかな?それに…風海、赤くなっちゃって可愛い♡いい匂いするね♡」
そんな呑気な状況じゃないのに…
そりゃ赤くなるよ!恥ずかしいもん!
灰原くんはこの状況を楽しんでいるようで、何度も抱きしめ直したり首に顔を埋めたりしていた。
すると呪霊の気配が強くなる。ようやく出てきたようで、灰原くんの読み通り、ただの男女じゃなくて、それなりの関係だったのかも。それが呪霊が出てくる条件。出てきてくれたのならこっちのもの!さっさと祓って七海くんのとこに行かないと!
わたしたちが立っている踊り場に天井から降ってきた呪霊。
『何あれ?!気持ち悪い!』
これはいつも思う。
呪霊って何で、こんなに気持ち悪い姿形してるんだろう。