第10章 幸せと不幸
声がよく響くように階段の踊り場に立ち、歌い始める。私を守るような陣形で待ち構えるものの、うまく祓えたようで飛び出してくる呪霊はいなかった。
現在2階。呪霊の気配はさらに上。3級の気配はない。
3人で階段を登っていくと、気配が強くなってきた。
『ねぇ、事前情報って2級だよね?今すでに強い気配を感じてるんだけど。』
呪具を構えながら4階フロアに到着した。
七「いませんね。5階に追い詰めたと思っていいでしょうか。」
灰「油断はできないよね!天井から降ってくるかも」
怖いこと言わないでよ、灰原くん。あるわけないと思いながら上を見上げると、呪霊と目があった。
気持ち悪い〜〜
『上!上!』
思わず叫ぶと、2人が構えたのがわかった。
七「いませんね。」
灰「さっき僕が降ってくるとか言ったから、そう見えたの?」
えっ!でもさっきたしかに…天井を見上げると大きなシミのようなものがあるだけで、呪霊の姿はない。
おかしいな…でも上から気配がするのは間違えない。とりあえず5階に向かおう。
ゆっくりと警戒しながら階段を登っていく。
灰「あれ?4階の表示になってる。」
確かに階段を登ったはずなのに、4階のまま。
七「行きましょう。ずっと4階なのか、3階に戻るのか確認しないと」
『一回止まって。さっきとは何か違う気配がするの。』
深呼吸して周囲の気配を探っていく。呪霊の気配は上から。下から何かが向かってくる。
『下から何か来る。上には呪霊。』
七「私は下、灰原は上、風海は援護。」
短い指示を聞いて、それぞれの役割をこなす準備をする。
下から来るものが何なのかわからない。事前の情報にはなかった呪霊?でも呪霊の気配じゃない。呪詛師?それならばまずい。七海くんと灰原くんを巻き込んでしまうかも。
階段を登ってきたのは、細身の男性。呪術を扱う人は顔が整っているのが条件なんだろうか?
?「アンタが人魚姫?」
誰も答えずにいると、一歩一歩近づいてくる。
?「答えないってことは、そーゆーことなんだよな?今日は特級と一緒じゃないんだ?」
色々調べてから来たってことね。呪霊もいるのにやりにくいな。狙いは私だから、呪霊は2人に任せて、この男は私が相手するしかなさそう。