第10章 幸せと不幸
教室に入ると七海くんと灰原くんが温かく迎えてくれた。
灰「風海!もう大丈夫なの?!」
七「またそうやって無理して…もう1日くらい休めばよかったのに。」
心配してくれる友だちがいて、私は幸せ者だな…なんて思っていると、緊急で任務が入った。1年生3人で向かうことになり、念の為悟さんと傑さんにメールをした。
授業を受けない代わりに任務をこなすことで単位が取れるとあって、うまくバランスが取れている。一応、都立ということもあり、5科目もしっかり授業を受けなきゃいけないから、普通の高校生よりも忙しいかもしれない。
補助監督さんの車に乗り込み、任務へ向かう。乗り物酔いは普段はしないけど、今は状況が違うからか気持ち悪い。眠気もあることだし、とりあえず眠ることにしよう。吐き気から逃げられるかも。
任務先に到着してから七海くんに起こされて、寝起きで任務にあたる。本当にふざけたことをしてると思う。事前の情報を軽く確認して廃ビルに入る。2級と3級の群れとのことで、七海くんと灰原くんは準2級、私は3級だから守られる対象なのかも。
肝試しをした数名の男女が行方不明とのこと。男女で訪れないといけないらしく、私たちに白羽の矢が立ったようだ。
昨日の体調不良のこともあり、七海くんが手を繋いでくれた。そもそも、肝試しが行われるような場所だから薄暗くて気味が悪い。こーゆーの本当に苦手。
七「風海、索敵が得意でしょう?お願いします。ただし、無理はしないでください。」
大きく頷いて集中する。
気配が至るところにある。3級の群れというだけあって、たくさんのグループがあちこちにあるイメージ。
『下の階から順番に祓っていこう。たくさんいすぎてわからない。』
このビルは5階建。どこの階に2級がいるかはわからない。最上階に隠れているならまだいい。3級の群れの中から飛び出して来られると、私は対応できないかも知れない。
常に気を張りながら気配を探る。
『この部屋に群れがいる』
灰「ねぇ風海。歌声に呪力乗せれば3級なら祓えるんじゃないの?」
その手があった!本当に私は融通が利かないな。
『そうだよね!歌うね!』
七「2級は向かってくるかもしれません。気をつけてください。」