第10章 幸せと不幸
ドアの外で話し声が聞こえる。硝子さんが帰ってきたようだ。吐き気が落ち着いたのでドアを開けると、七海くんと灰原くんが帰るところだった。
『七海くん、灰原くん、ありがとうね!早く元気になるね!』
灰「ゆっくり休んでね!」
七「無理しないようにしてください」
そう言って出て行った。
硝子さんが買ってきてくれた妊娠検査薬を手渡してくれる。
硝「使い方わかる?説明書入ってるけど…」
早く調べなきゃいけないのはわかってる。けどもし妊娠してたら、なんて説明すればいいの?私たちはまだ学生で、お給料もらってはいるけど、まだ大人ではない。
それに喜んでくれる保証もないし…どうしよう…
硝子さんが話しているけど、何も聞こえない。
硝「風海、聞いてる?」
と言われてハッとした。
『…ごめんなさい…』
硝「とにかく、これを調べないと風邪の病院行ったり薬も飲めないし、出来てたとしても産婦人科のある病院行かないといけないから。今は諸々考えちゃうと思うけど、優先順位を間違えないようにね。ここで待っててあげるから、トイレ行っておいで?」
確かに…さっき風邪薬飲んでしまったけど大丈夫かな?
トイレへ向かい、説明書の通りに尿をかけて表示が出るのを待っている。家族会議どころでは済まないかもしれないな…
そろそろいいだろうとドキドキしながら表示を見ると、
線が2本 陽性 だった。
時が止まってしまったように、しばらく動けなかった。中に出したのは傑さんだけど、外に出したけど生でしたのは悟さんも。どっちの子かわからない。好きなあまり許してしまっていたけど、こんなことになるなんて…
硝「…風海、どうだった?」
ノックとともに硝子さんの声がして、我に返った。私1人で決められることではないし、このどうしようもない感情を共有したかった。傑さんにも悟さんにも言えっこない。
『硝子さん、どうしよう。陽性でした…』
本来、幸せな出来事のはずなのに…そう思えない自分が情けなくて。私のお腹にきてくれた事を喜ばないといけないのに、それが出来ない。
硝「…心当たりはある?」
硝子さんも動揺しているのか、私の肩を強い力で握っている。
心当たり…どっちなのかということ?
『…どっちかわからないんです…』
硝「アイツら…とりあえず、任務帰ってきたらここにきて話そう」