第9章 パーティー
私はドリンクをもらって見学していた。呪霊と戦う時には、臨機応変にすることはできるが、動きを予想して動くことが苦手なので、直哉さんの動きをよく見て、次は何を出すのか、術式なのか体術なのかを判断するために見学していた。
動体視力を鍛えるのにもいいかもしれない。
なんて考えていると、私の方に向かってくるのがわかった。でも、あえて何もしない。瞬きもせず、笑顔を浮かべたまま。
なぜなら傑さんを信じているから。
周囲が息を呑むのがわかった。
蹴り飛ばされて床に尻もちをついた直哉さん。
傑「君はなかなかに卑怯だということがわかった。なぜわざわざ彼女に手を出そうとする?怪我したらどうしてくれるつもりだった?」
そう言いながら冷たい視線で見下ろしている。
あぁ、すごく怒ってる…
傑「御三家の次期当主だかなんだか知らないが、思い上がるのもいい加減にしろ。風海に手を出すな」
傑さん、かっこいい。
ドリンクをテーブルに置いて、傑さんの背中に抱きついた。安心する香りを感じて、早くこの場から離れたくなった。
傑さんが私の背中に腕を回して引き寄せてくれる。
傑「行こう。怪我はないよね?」
そう言いながら歩き出す。
息一つ乱れていない。先ほどまで緊迫した状況だったのに、私には優しい笑顔を向けてくれる傑さんがカッコ良すぎる。
私たちが歩く道をみんなが開けてくれる。まぁその分見られているわけだけど…。
やっぱりヒソヒソと話し声が聞こえるけど、今は傑さんに夢中だから何にも聞こえないのと同じ。チラチラと傑さんを見上げていると、目が合ってしまった。
傑「そんなに見ないでくれ。ここで我慢できなくなってもいいのかい?」
少し赤くなってそう言ってくれた。
『だって傑さんが素敵なんだもん。…我慢できなくなったら、どうなっちゃうんですか?』
素朴な疑問だった。
ちょっと期待もした。
優しいキスをくれるんじゃないかと。
傑「それは挑発と受け取っていいのかい?」
と悪そうな笑顔で顔を覗き込まれた。
その表情で少し不安になりながら会場を後にする。
エレベーターに乗り込もうとすると、すでに乗っている人がいたが、一緒に乗り込んだ。箱の隅に連れて行かれ、傑さんの身体で私を隠すような体勢でキスしてくれた。
甘い甘い溶けそうなキス。
一緒に乗っている人は音で気がついているだろう。