第1章 出会い
悟さん…五条家の人から説明されたことによると
何百年も前、人間に恋をした人魚は呪術師の力を借りて足を授かり、陸へ上がった。2人は結ばれ、足を授けてくれた五条家に感謝をしながら過ごした。その一族は呪力が強く、特に海のような瞳を持っている女の子は、莫大な呪力量と人魚の力を授かる。
姿は美しく、歌声で人を惑わす。
そして人魚の涙は、人を癒し、血液は不老不死の力があるとの言い伝えから、呪詛師によって拷問された。
捉えられた人魚は目の前で身内を殺され、涙を流させられ、最後には惨殺され血を搾り取られる。
そんなことが繰り返され、その人魚の一族は衰退したという。
五条家にはもっと詳しい記述が残されている。
元々足を授けたのは五条家の術師のため、人魚の一族と深い関係にあった。そして当時の五条家の無下限術式を使う当主と人魚姫が恋仲だった。結婚の約束をしていたが、人魚の涙を一族のものにしようとしていると批判され、他の御三家や呪術界から猛反発があった。それでも強行しようとしたところ、人魚姫は家族を人質に誘拐されて殺されてしまった。
それからというもの五条家は呪術界への反発、御三家との関係は最悪、という状況だ。
人魚姫と結婚しようとしていた当主はその後誰とも結婚せず、遺書にはこう残されていた。
愛する人はただ一人。来世では必ず結ばれる。
必ず守るから、同じ時代を生きて欲しい。
と。その後禅院家との戦いで死ぬまで彼女を想っていたという。
武神家の家宝についても記述があった。
珊瑚の髪飾り、真珠の首飾り、三叉の矛
どれも海のものだ。人魚伝説を裏付けるものばかり。
どんな術式で足を与えたのかはわからない。人前に出てこない人魚との出会いもわからない。
けど、信じるに他ならない情報ばかりだった。
それに、我が家で門外不出の家宝のことを知っているということは、それなりに深い関係にあったということだ。