第1章 出会い
夏油side
風海を見送ってから3人で歩き出す。
いつも騒がしい悟が今はやけに静かで、硝子と不審に思っていると
悟「…なぁ、人魚伝説って信じる?」
美しいものを見ると人が変わってしまうほど影響を受けるんだろうか。そんなことを考え
傑「アンデルセンの?…まぁ見たことはないけど、呪霊の一種かい?」
何百年も前、日本にも人魚伝説があった。
人間に恋をした人魚は呪術師の力を借りて足を授かり、陸へ上がった。2人は結ばれて、足を授けてくれた呪術師に感謝をしながら過ごした。その一族は呪力が強く、特に海のような瞳を持っている女の子は、莫大な呪力量と人魚の力を授かる。姿は美しく、歌で人を惑わすらしい。
そして人魚の涙は、人を癒し、血液は不老不死の力があるとの言い伝えから、呪詛師によって拷問された。
捉えられた人魚は目の前で身内を殺され、涙を流させられ、最後には惨殺され血を搾り取られる。
そんなことが繰り返され、その人魚の一族は衰退したという。
硝「…それってさ…」
傑「一族の名はわかっているのかい?」
悟「まぁね、だからびっくりしてるとこなんだけどさ〜条件が揃いすぎてる。」
確かに悟の話だと苗字が同じ以外にも共通点が多い。そして何より、呪術高専に進学したいと言った時に家族が猛反対したこと。
この業界に入ってしまえば、情報はすぐに漏れる。むしろ今まで平気だったことの方が奇跡だ。
でも人魚伝説が本当だったとして、狙うのは呪詛師だけとは限らない。普通の一般人ですら興味のある話だ。
それにあの美しさだ。
なぜ今まで噂にすらならなかったんだ?田舎に住んでいても、騒ぎ立てられてもおかしくないくらい綺麗な眼をしてる。