第1章 眠り姫
その日の夜。
山姥切長義と夜間の遠征部隊を送り出して、本日の仕事は終了。
「足下に気を付けて行ってくれ」
「ああ」
「行ってらっしゃい」
夜間の遠征部隊が門を出ていくのを見送り、建物の中に入った。
居間で談笑している刀達や、寝る用意を始める藤四郎達、明日の仕込みの準備をする歌仙と燭台切。
主は執務室に戻り、後片付けをはじめる。
「お疲れ様、主もゆっくり休むように」
「うん、ありがとう」
長義が手伝ってくれたお陰で予定よりも早く仕事を終えることが出来、主は夕飯と入浴を済ませた後いつもの縁側に座った。
誰もいない縁側に、足音が近付いてくる。
「主」
「なあに、日光」
「今日はすまなかった、近侍としての役目も全う出来ずに」
主はくすくす笑った。
人間に疲労が溜まるように刀達も疲労が溜まるのだから、刀も悩んだり落ち込むことがあるのも当然だ、と。
「隣に座っても、良いだろうか」
「ええ。その後、どう?」
「ゆっくり休むことが出来た、感謝する」
主の隣に腰を下ろし、彼女の視線の先を見つめると月が輝いている。
また1人で月光浴をしていたのか、と。
「日光、次は慶応甲府を調査する任務よ」
「調査?」
「監査官と合流し、歴史改変された慶応甲府の調査と歴史を修正していく任務よ。
今回は加州清光の参加も求められてるみたいね」
今回は太刀の枠で日光と山鳥毛に特命調査に参加してもらうと主は言った。
明日はその部隊編成も考えなくては、と主は溜め息を一つつく。
仕事の時間でもないのに、また仕事のことを考えてしまった。