第1章 眠り姫
いつかは主も帰りたいと言う時がくるかもしれない。
そう考えたら、作業をする手が止まった。
現の主は仕事を進めている。
「………っこう」
「………」
主が腕を揺すってきて我に返った。
「日光?顔色悪いよ、大丈夫?」
「大したことではない、考え事をしていただけだ」
「私より、日光の方が疲れているんじゃない?
今日は上がっていいから休憩しなさい?」
主命だと言われたら断れる訳もなく、日光は執務室を出た。
*
主が現世に帰れば、二度と戻って来ないかもしれない。
そう考えると、胸がチクチクする感じがした。
「おや、日光が考え事とは珍しいな」
「山姥切長義か」
「君、今日は近侍じゃなかったか?なぜ主の傍にいないんだ?」
その主に休めと言われた。
主命だと言われたら、逆らえる訳もなかったと説明したら山姥切長義も納得したようだ。
「それは確かに断れないな」
「…ああ」
「ならば俺が主の様子を見てこようか。
ちょうど報告書を提出しなければならないしな」
「そうしてくれ」
山姥切長義は執務室に赴き、日光は縁側に座って庭で走り回る短刀や脇差達の様子を見ている。