第1章 眠り姫
日光が残りの仕事を代わってくれたお陰で、負担も軽くて助かった。
「終わったぞ」
「…早いね」
「主の仕事を見ていたから、進捗や仕事内容はある程度把握している」
机の上を片付けた日光が主の隣に腰を下ろした。
「お疲れ様。ありがとう、代わってくれて」
「主の補佐は近侍の役目でもある。気にするな」
「日光もちゃんと休憩して」
主は席を離れて厨房へ行ってしまった。
「…………」
しばらくするとお盆に湯呑み2つとお菓子を持った主が戻ってきた。
「お待たせ。光忠がお菓子をくれたの。一緒に食べない?」
「ああ、頂こう」
頭を使った後は甘いものを摂ると良いと言われ、光忠からカステラをもらってきた。
「…これは」
「カステラよ。長崎…肥前の有名なお菓子なんだけど、昔は白いお砂糖がとても貴重で高級な物だったらしいよ」
「ほう?では、主が生まれた頃にはもう一般に出回っているんだな?」
「今はどの家庭にもあるんじゃないかな」
黄色くてふわふわでしっとりとしていて甘い。
裏側にはザラメがあるため、少しカリカリした食感がある。
「主が過ごしていた現世を、一度はこの目で見てみたいものだな」
「うん。機会があれば、予定を合わせて行きましょう」