第1章 眠り姫
「お花、すごく綺麗だった。冬桜が満開になってるなんて思ってもいなかったけど」
「そうだな、俺も楽しめた」
本丸では滅多に2人きりになれないから、2人きりの時間は大事にしていきたい。
「暗くなってきたな。主、寒くないか」
「うん」
「秋は夜が長く、すぐに暗くなるからな。またはぐれないよう気を付けてくれ」
主に手を差し出せば、主は日光のその手をキュッと握った。
こうすれば、はぐれずに済むと分かったから。
「主の手は、細いんだな」
「日光の手が大きいだけよ、身長も高いし…ね」
「ああ」
帰路でも主と話をしながら歩いた。
また一緒に月を見ようとか葡萄酒を飲もうとか。
普段本丸では話す機会も少ないから、つい話が弾んでしまう。
*
真っ暗になる手前で本丸の門に到着し、心苦しいが逢引は終わりだと手を離した。