第1章 眠り姫
「お待たせしてごめんなさい、用意出来たよ」
「ああ。…………!」
扉を開かれて聞こえる主の声で振り向くと、主は綺麗に化粧を施して着物を着ている。
「…変、かな?」
「いいや、綺麗だ。では行こうか」
「はい…!」
主は普段も軽く化粧をしているが、こんなにしっかりと化粧をしているのは初めて見る。
日光と主は本丸を出た。
*
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「わぁ、綺麗…」
植物園と言えど、どんな場所へ連れて行かれるのか少し心配していたが、主が以前から気になると言っていた場所のようだった。
「思っていたより人が多いな…。主、俺からはぐれないよう、気を付けてくれ」
「うん、大丈夫。あっ、あのお花可愛い」
早速目の前で咲いている桃色の花に近寄り、眺めている。
「椿かな?」
「ああ、あれは山茶花だ。秋から冬にかけて咲く、…まぁ、椿の一種だな」
「詳しいんだね」
「……まあな」
あっちにも可愛い花があると、主は小走りで向かっていって眺めている。
「まったく…はしゃぎすぎだ」
フッと笑う日光も満更ではなかった。
色んな花を見て回る主が楽しそうならば、連れて来て良かったと思った。