第1章 眠り姫
お団子にして固定した三つ編みを軽くほぐして、緩やかでふわっとしたお団子になった。
「日光、髪結い出来るんだね」
「自分の髪の毛は自分で束ねている。
まぁ、身嗜みに拘る伊達男の燭台切光忠の方が、主をもっと可憐な姿にしてくれるのだろうが」
日光は懐から、以前遠征先で購入した紫の桔梗の簪を取り出す。
やっと彼女にこれを渡せる、と。
「………」
あの時は主が長い眠りに付いてしまい、渡せないまま日光の部屋の引き出しにしまわれていた。
まるで簪が今はまだその時ではないと言っているかのように、渡す機会を与えてくれなかったから。
緩い三つ編みのお団子を微調整し、横に簪を挿すと終わったぞと言った。
二面鏡を開いて主の後頭部を化粧台の鏡に映すと、その簪が映った。