第1章 眠り姫
「日光、怪我はしてない?」
「…ああ」
手合わせを終えて縁側で休憩をしている日光。
汗をかいているようで、髪がしっとりと湿っている。
「もし怪我をしていたら、私の力で…」
「大丈夫だ、負傷はしていない」
日光は主の手を包むように握って言葉を止めた。
「俺の身を案じてくれているのは嬉しい。が、主はもう少し自分を大切にして欲しい」
「……え…」
主の手を包んでいた日光の手が、頬に触れる。
「我々刀剣男士のために霊力を使うのはいいが、無理だけはしてくれるな、いいな?」
「は、はい…!」
あの時みたく、主に負担をかけさせないと決めた。
顕現して日が浅く、自分が未熟だったが故に主の霊力を使わさせ、その報いに長い眠りにつかせてしまった。
主は皆が命を掛けるなら自分も命を掛けると言って気にしていないみたいだし、
今では懐かしい思い出みたいになっているが、決して忘れてはいけないことだと思っている。
「主が怪我を負ったら、簡単には治らないのだから」
「人間の自然治癒力はそんなもんよ」
「主は俺達みたいに、手入れ部屋で手入れをすれば元通りとはいかないのだからな。
もっと自分を大切にしてくれ」
フッと笑う日光は、主の背をトントンと軽く叩くように触れた。