第1章 眠り姫
「……お前も、山姥切国広同様、自分は主のための刀だと自負するのか」
山姥切国広は、日光が顕現した当初から主のための刀だと自負している。
ならば本歌である長義も同じなのでは、と思えてならない。
日光は刀を強く握った。
「…もちろん、そのつもりだ。
この本丸にいる以上、彼女の刀であることに変わりはない」
長義は刀を拾い上げてキュッと靴を鳴らし、日光への攻撃を再開する。
「隙を見せるな、日光。その顔にまた傷を作ることになるぞ」
「…………っ!」
山姥切国広につけられた傷は、主の霊力により跡形もなく消えている。
顔に傷を作ってしまったのは、山姥切国広が色んな意味で強かったから。
あの時の日光はまだ顕現して日が浅く、実戦経験も手合わせ数も低かった。
…なんて、今では言い訳にしかならないか。
山姥切国広は本当に強かったし、自分に油断があったことには変わりはなかった。
「相手が俺だからと余裕をかましていると、痛い目に遭うぞ」
「…ああ、分かっている」
「気を緩めるな」
“手加減なんて、格好悪いだけだからねぇ!!! ”
“俺は主のための刀。強くなりたいと思うのは俺も、同じだ!”
燭台切光忠と山姥切国広の言葉を思い出す。
どちらも主を大切にしているし、手合わせでは誠意と本気をぶつけてきた。
そしてこの山姥切長義も、本気でぶつかって来る。
手合わせ相手が誰であろうと、本気をぶつけなくては。
日光は刀に意志を込め、ぶつかって来る長義の刀を受け止めた。
「…ああ、そうだな。油断大敵…だな」
「ははっ、良いぞ…楽しめそうだ」
長義の刀を振り払うと、こちらも反撃へと転じる。