第1章 眠り姫
「!!?」
眠りについた主に口付けをしたことは何度かあったが、起きている主に口付けをするのは初めてでその主が驚く様は新鮮に思えた。
「驚くことか?」
「だ、って…」
「その場の雰囲気でしたくなった」
主は自分の口を手で塞いで、逸らした顔は赤くなっていた。
「こういうことは初めてか?」
「…そんなことない、けど」
百面相を見ているみたいでおかしくなり、日光はクスッと笑う。
「わ、笑わないで…!」
「ああ、もちろんからかっている訳ではない。主が可愛らしい反応を見せるから、ついな」
「………もう!」
頭を撫でてやると、もう一度口付けをしてくれたら許すと言うので日光は主に再び唇を重ねた。
「昔は口吸いとか接吻とか言ってたらしいけど、現世ではこれをキスって言うのよ」
「……ほう、覚えておこう」
主は月見酒の続きを、と日光にグラスを手渡した。
「じゃあ日光、もう1杯」
「ああ」
葡萄酒の2杯目を静かに注ぎ、今度は2人でグラスをカチンと鳴らして乾杯をした。