第1章 眠り姫
「私も、日光が好き、です。
こんな審神者で良ければ…よろしくお願いします」
「!」
日光の周りに桜の花弁がひらひらと舞ったような気がした。
俗に言う嬉しいと桜が出る現象だ。
短刀達で特によく見ていた現象だが、日光が桜を出すなんて相当貴重なことだな、と。
周りから無愛想と言われているけれど、
ただぶっきらぼうなだけで、本当は優しい人なんだと気付いてからは自分から少しずつ歩み寄ってみようと努力をした。
「日光は宝刀だから高嶺の花みたいに、手が届かない人だと思ってた」
「俺は主の下に顕現した刀だ。主の手は俺に届いている。
ここに顕現した一文字は皆、貴女の刀なのだからな」
主の手を握った日光と目が合った。
事実だと言っているかのような、強い眼差し。
この人なら、目力だけで敵を怯ませることが出来るのではないか。
「告白してきたということは現代の人間で言うと恋人、刀だと愛刀になるということだけど…問題は、ない?」
「ああ、ないな」
刀だから愛刀か、と自分で言っておいて納得してしまった。
日光一文字という宝刀が好きだと言ってきたことに未だ現実味がなくて、まだ夢ではないかと疑ってしまう。
「日光と一緒に見たいもの、行きたい場所、やりたいこと、たくさんあるの」
「…ああ、何処へでも同行しよう」
「嬉しい…!ありがとう…!」
思わず日光の胸に抱き付いた。
その行動を見た日光は、主の背中に腕を回して受け止めてくれた。