第1章 眠り姫
「………え…?」
その言葉に驚いて、目を丸くした。
日光の口から、好きだなんて言葉が出て来るなんて思っていなかったから。
「日光、酔ってる?大丈夫?」
「残念だが、俺はグラス1杯の酒を飲んだ程度では酔わない」
そうだよね、と苦笑いをする。
葡萄酒を飲み、酔った勢いで言ったのかと思ってしまった。
が、普段から山鳥毛や他の刀達と飲んでいる日光が簡単に酔っ払うはずもないし、
日光の性格からしても冗談で告白をすることは考えられる訳もなかった。
「…日光が、私を…?」
「あぁ、貴女は涙脆い人だったな」
緊張の糸が切れ、頬を一筋の涙がこぼれ落ちた。
こぼれていくその涙を、日光は指の背で拭ってくれた。
「困らせるだけ、だったか」
「そんな事ない、よ。ちょっと、びっくりして…」
容赦ない駄目出しをくらうのかと内心で身構えていたら、まさかの告白で。
「日光が、私を好いている…?夢じゃないの…?」
「夢ではない、現実だ」
別の意味で心臓が高鳴る。
目の前には日光一文字。
今一番傍にいて欲しいと思っている日光がいて、その日光が主のことが好きだと言ってきた。
「………私なんかでいいの、かな…?」
本当に自分は、日光に相応しい女性なのか。
一文字一家は国宝やらなんや揃いで、位の高い人にこそ相応しい刀なのでは…と考えたら自分なんて…と尻込みしてしまう。
「…………」
「主、考え事も程々に」
「…あ、うん」
告白されたのだから、きちんと返事をしなくては。
日光だってきっと一世一代の思いで告白してくれているのかもしれない。
自分も現世にいた頃に、好きな人に告白したことがあった。
当時はすごく緊張した記憶しかないけれど。
「まさか日光に告白されるなんて、思ってもいなかった…」
主は日光の目を見て、組んでいた手に力を込めた。