第1章 眠り姫
「はぁ…、終わっ、た………」
「お疲れ様。主、君もゆっくり休むといい」
「手伝ってくれてありがとう、長義。あとは私が片付けておくから。
お風呂が空いていたら貴方も入って。その後は休んで構わないから」
「そうか?では、主の言葉に甘えさせてもらおうかな」
執務室を出ていく長義を見送ると、背伸びをした。
今日は仕事量が多くて、長義の手助けがなければきっと終わらなかった。
机の上を片付けて、執務室を出ていく。
「…お疲れ」
「あ、ありがとう。日光も湯上がりなのでしょう?
湯冷めしちゃうよ、部屋に戻らないの?」
執務室の扉の横で、壁に背中を預けた軽装姿の日光がいて。
「湯上がりだから、水分を補給しに行くところだ」
「そうね、湯上がりは喉が渇くし」
「……と言うのは建前で、主を1人にさせないためだ。
誰か1人でも近くにいれば、主も安心だろう」
本丸内を探したり呼んだりすれば、必ず誰かが近くに来てくれるのだが、こうして自ら傍に来てくれる日光に心強さを感じる。
目の前にいる日光の軽装姿も、戦闘装束とはまた違う格好良さがあって。
「ここは冷える。居間へ行くぞ」
「うん」
*
「主、すまない。先に風呂に入らせてもらって」
「いいのよ。長義の手伝いがなければ、きっと今日中に仕事が全部片付かなかったから」
日光とお茶を飲みながら休憩していると、湯上がりの長義が主の様子を見るべくやって来た。
こちらは身軽なジャージ姿だ。
ただでさえ綺麗な人が湯上がりで色っぽくて、
さらには髪を濡らしていて水も滴るいい男状態になっている。
「君も風呂に入っておいで。心身共に疲れを癒してくると良い」
「山姥切長義の意見には、俺も賛成だな」
「…じゃあ、私もそうしようかな」
「ああ、温まっておいで」
顔を覗けば、2人とも湯が冷めないうちに入ってこいと言っているようだった。
主は席を立ち、風呂場へと向かう。