第1章 眠り姫
「傷の手当てをしてもらい、感謝する」
「お?我が翼よ、顔の傷が完全に癒えたか。
そろそろ出発の用意をしてくれ、これから遠征だ」
「御意」
山鳥毛に呼ばれ、日光は遠征の身支度を整えに部屋へ向かう。
部屋へ向かう日光の背中を見送り、ふぅ…と息を吐く。
もう少し話をしたかった、と。
「我が翼と話している最中にすまないな、小鳥」
「大丈夫、大した話じゃないから。
それに、この時間に遠征に行くよう予定を立てたのは私だから…何も言えないわ」
主は首を横に振り、近侍の山姥切長義と共に門まで山鳥毛率いる一文字一家の遠征を見送りに来た。
「主、何かあればこの鳩を我々に飛ばしてくれ。すぐに本丸に帰還しよう」
日光は遠征呼び戻し鳩が入った鳥籠を主に手渡した。
主に何かあったら困るから。
鳥籠を受け取った主は、小さく頷く。
「では、行ってこよう」
「行ってらっしゃい」
「気を付けろ」
「ったり前だ、にゃ!」
山鳥毛達を見送ると、主は仕事をするべく執務室に入った。